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 人間のコピーとして、33Sタイプはほぼ完璧といえた。
 外観の問題は、先行した初期型のブーマで既に解決されていた。基本的な動作、行動パターンのシミュレート、これもブーマ以前のオートマン、ロボット技術時代の課題だったにすぎない。ブーマは新方式アクチュエータ、機能高分子人工筋肉を使うことによって反応速度、重量、エネルギー変換効率でも人体と同等のレベルに到達した。
 33Sタイプでは、これらに対してはシェイプアップが図られただけだ。
 33Sの開発における中心テーマは、問題の自己解決機能だった。
 深宇宙開発において人間に替わって、どのような不測の事態にも最適の判断を下し対処する。そのためには、従来の知識ベースにたよったブーマの頭脳では不十分だ。もちろん、従来型のブーマの人工脳でも、旧世紀の光電子回路やソフトウェア技術による人工知能とは比較にならない程進歩したものだ。しかし、まだ人間にはおよばなかった。発展的推論機能、発見機能が欠けていた。ブーマは非常に巧みに人間を模倣するが、この点で決定的に人間と異なっていた。
 33Sは、このただひとつの相違点を解消するための画期的な試みだった。
 ごく限定された範囲の問題を対象としてプロジェクトはスタートした。
 多くの困難が予想され、実際、開発には計画以上の時間と資金が必要になった。
 開発スタッフは、画期的な機能の付加、そのようにしかプロジェクトを考えていなかったが、達成された成果は予想以上のものだった。
 いや、当然の帰結ではあった。
 しかし、その具体的な姿を思い描いたものがいなかったのだ。
 人型の中に封じ込められた知性が、いったい何であるのかを。
 深宇宙探査という目的には、人と同じ形態をとる必要はない。
 だが、なぜか彼らは完成した知性をブーマという体に与えることにした。
 予定通りに完成した新ブーマの動く姿を目の当たりにして、スタッフは我が目を疑った。それは 「火を入れる」 前の予想とはまったく違っていた。ブーマを扱いなれた技術者たちにとっても、33Sの表情、動きは驚きだった。

 33Sタイプはその目的に適合させるためメンテナンス・フリーに造られた。
 そして目的通り、多くが深宇宙探査に投入された。だが、あまりに人間に近かったため、違う目的にも使用されることになった。
 セクサロイドとして。
 33Sタイプは非常にコストが高かったので非現実的と考えられていた用途だったが、人間の欲望に際限はなかった。わづかずつではあったがその数は増えていった。
 33Sは完璧な人間のコピーだった。
 いや、コピー以上だった。
 それは人間と別の生命であった。



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