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雲一つない、そんな言葉がぴったりと当てはまる空だった。秋になったとはいえ、差し込む陽射しは日向では汗ばむほどに感じられ、木陰にはいるとちょうど快適な心地になる。 「うん、それっきゃない!」 ガッツ・ポーズをばっちり決めて、少女は一人頷いた。 「おいおい、何に納得してるんだい」 木漏れ日の中、ぼんやりと日光のきらめきを見つめていたまことが尋ねる。 「何って、作戦よ、作戦!」 「作戦って…?」 「だから、決まってるじゃないのよ、ピュアな心を狙ってくるやつらの正体を暴くための作戦!」 美奈子はじれったそうに繰り返す。 「ああ、ダイモーンとかいう連中だよな」 「まこちゃんてば、何よその気のない返事は! 重大なことなんだから、これは」 「ごめんごめん。ぼんやりしてて、ちゃんと聞いてなかったんだ」 帰り道、偶然出会った二人は、その公園で他愛のないおしゃべりで時間を潰していた。話題はいつのまにか最近続いている事件のことになり、そして、新しい敵の正体と謎の戦士たちについてへと移っていった。 「敵なのかな、やっぱり…」 「何言ってるのよ、人の心からピュアな結晶を奪うなんて、悪いヤツに決まってるわ。それを私たちが、見逃せると思って?」 やけに燃えてるよな、きょうの美奈子ちゃんは…。 まことは思った。 彼女にも、身近にたて続けに起こる事件は気にならないわけはない。他人の心を操って、その大切なものを奪おうとするのは許せない。 しかし、まことの関心の対象は、美奈子とは少し違うところにあった。 常に事件の場に現れる、あの二人。 それこそ、敵か味方かは分からない。セーラー戦士なら、味方のはずなのだが、彼女たちに関わるなと警告し、協力を拒絶する。 うさぎちゃんや亜美ちゃんが狙われたときだって、助けてくれたわけじゃないもんな…。 自分たちの目的に沿わないから、探していたものとは違うから、心の結晶を返してよこしただけ。単に直接、戦わないというだけで、示す態度は、やはり敵対的だ。 気に入らなかった。 白黒、善悪をはっきりさせたいというのは、まことの性格だから、それは当然のことだ。 特に、二人の片割れ、きつい目をしたショートヘアは気にくわなかった。 でかいガタイで、似合わないカッコしやがって…。 ずっとそう考えていた。 しかし…。 最近気づいたのだ。ある人物と、そいつのイメージが重なるということに。 はるかさん…。 「…まだ狙われてないのは、私だけだから、きっと来るわ、だから、それに備えて…」 「ああ」 上の空で相槌をうつ。 きっぱりとして、女なのに男のように振る舞って見せていても、それがちっとも不自然じゃない。少し年上の、あこがれのような人。 やっぱ、惚れっぽいな、わたしは。 うさぎちゃんや美奈子ちゃんのように、ストレートにミーハーしないけれど、同じくらいに心が揺れてしまう。 まことは思った。 でも、何故、あんな嫌みなヤツとはるかさんが重なって見えるのだろう。 確かにシルエットは同じだ。 逆に、そうでないと否定するような理由があるのだろうか。 理由といったら…。 そう考え出すとまことには自信がなくなってくる。 自分たち五人と出会ったときに見せる、はるかの、無邪気な子どもを見守る保護者のような視線と、自分たちの領域への立ち入りを拒絶する、あの戦士の断固とした視線と。 まったく正反対のようでいて、それは一つの性格の二つの側面なのかも知れない。 理由として数え上げようとすると、そのどれもが同じように一つに溶け合わさってしまい、説得力を失ってしまう。 仮の姿と現実の姿。 一人の人間の二つの側面…。 そうなのか。 他者を拒絶する冷たさと、暖かい眼差しは同じ人間のものなのだろうか。 「…今度こそ、目にもの見せてやりましょうね。それで、ついでに、あの二人のセーラー戦士の正体も掴んでやるのよ! 一網打尽の作戦よね」 「…え?」 まことはもたれている立木越しに美奈子を振り返った。いつも通りの、美奈子のとんちんかんなことわざ使いが、まことをとりとめのない物思いから秋の昼下がりの現実へと引き戻した。 まことは苦笑する。 「それを言うんなら、一石二鳥、だろ」 「あ、まあ、そうとも言うわね」 慌ててごまかす美奈子。 「でも、そう簡単に掴めるのかな、正体を…」 「何言ってるのよ、後をつけて、変身を解くところを確認すればばっちりじゃない。五人で役割を分担すれば何でもないことだもの」 「うん、そりゃそうかもしれない」 美奈子はそれを聞いて、かすかに首を傾げた。 「なんか乗り気じゃないみたい」 「そんなことはないさ、けれど、正体が分かっても何にもならないんじゃないかって気がしてさ」 「どーしてぇ、どうしてまこちゃんはそんなこと思うの…?」 「え、あ、別に理由はないんだけど」 ぐいと、目の前のに美奈子の顔が迫って、まことは返答に窮した。 「…私の作戦を信じられないの?」 「あ、そ、そんなことはないさ」 「じゃあ、どこがいいか言ってみてよ! やっぱり聞いてなかったんでしょう」 両手を腰に当て、まことを睨んで、美奈子は大きなため息を吐く。 「最近、変だよ、まこちゃんは。一緒にいるとすぐにぼんやりと考え込んじゃって。さては、また、誰かいい人見つけたんだな」 「ち、違うって」 手を振って否定するが、そう簡単に引き下がる美奈子ではない。 「いいから、どこの誰だか教えなさいよ!」 「何でもないって!」 上目遣いに見上げながら、腕を掴んで答えを迫る美奈子にまことはたじたじだった。 そうしているうちに、またいつの間にか話題はたあいない日常へと戻っていく。変わらないのは、まことの心の一部に残っている二つの重なったイメージだった。 |
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