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§ 錯綜


 高速巡恒艦カルパートは3体目の標本を収容すると、光速圏に突入、短距離の遷移を実施した。再度、通常空間に戻ったとき、カルパートは第9星系の内部に位置していた。搭載した強力な重力補償子と遮蔽スクリーンの威力で、カルパートの光速圏航行はソルノイド側にもパラノイド側にも探知されなかった。

 親衛隊の将校はドアの前で立ち往生していた。
 足もとからサポートのドロイドが、まるで彼女を気遣っているかのようにセンサーアイを光らせ見上げている。
「どうしても会わせてもらえないんですか」
 エルザの抗議の声が室内に響いた。
「とにかく、今は駄目なんです。しばらくここで休養して、待っていただかなくては、少尉」
「待つと言っても、わたしにはスターリーフの状況を報告しなければならない義務があるんです。艦長に会わせろというわけじゃありません。誰か責任者に会わせて下さい」
 ドロイドにエルザの食事を運ばせて、コンパートメントに入って来た士官はエルザに詰め寄られて弱り果てていた。開いた両の掌をエルザの方に向けながら、どうしたものかわからない。
 大尉から指示があった事情聴取が終わった途端に、別の、さらに上級の将校に会わせろとエルザに要求されたのだった。心情的にはエルザというこの軍の少尉の言い分はもっともだと感じるのだが、自分で勝手に判断するわけにはいかない。
 命令がない以上どうにもならない。
「私にも義務があるんです。私程度のものでは駄目だと言われても…。お願いですから、ベッドヘ戻って下さい。ここは親衛隊の艦ですから、親衛隊のルールにしたがっていただきたいですね」
 エルザはいらだたしげに首をふった。
 普段はオールバックに固めてある髪が、頬のすぐそばで揺れた。集中治療ユニットで蘇生処置を受けたおかげだ。化粧っけも何もない、険しい表情のエルザの顔を縁取っている。
 落ち着かない。
 いつもと違っているから、ただそれだけのせいじゃないけれど。
 エルザは手で髪をすき上げながら思った。
 これも早く何とかしなくては…。
「それならせめて第9星系遠征隊がどうなったか、それだけでも教えて下さい」
 親衛隊の少尉は今度は肩をすくめた。
「それも無理です。本艦は現在特別任務を遂行中です。これが完了するまでは、外部との接触は一切出来ません。軍の戦闘状況の情報などこの状態下では入手不可能です」
 そのまま無言で二人は睨みあう形になった。
 エルザはじっと相手の視線をとらえ続けた。先に目をそらしたのは親衛隊の将校だった。
「わかりました。負けましたよ」
 開いた両の掌を天井に向けてみせると、ひとつ大きなため息をついた。
「艦長には無理ですが、大尉に相談してみます。あなたの様子を報告しなければならないですしね。ただし、どうなるかは保証しませんよ」
 やっと同意をひきだして、エルザの顔に安堵の色が浮かんだ。
「ええ、構いません。それで大尉というのは?」
「キャティ・キャラウェイ大尉。我々の作戦の責任者です」
 エルザの質問に答えながら、親衛隊の将校は入口ドアのわきにある複合パネルに歩みよった。
「キャティ、今、キャティ大尉と…」
「それが何か?」
 将校はコードを入力仕掛けたのを中断し、振り返った。
 エルザは彼女が自分の返事を待っているのに気づいて慌てて首をふった。
「いえ、別に」
 そう、同じ名前の人間くらい何処にでもいる。きっと偶然ね。
 でも…。
 エルザはその名を聞いて、考えていた。スターリーフのクルーのことを。
 もう何十年も過ぎてしまったような気がする。
 キャティという名を聞いて、ひとりひとりの声、存在が急にはっきりとしたイメージと共によみがえってきた。
 無事にカオスにたどりついているだろうか。
 残存艦隊と合流しているだろうか。
 あの悪夢は、私の単なる夢にすぎないわ。
 エルザは自分に言い聞かせた。
「エルザ少尉、すぐに連絡をとりますからベッドに戻っていて下さい」
「あ、はい」
 声をかけられて顔を上げたエルザに、将校は笑顔をみせるとパネルに向き直った。
 エルザはベッドの縁に腰を下ろすと、親衛隊の少尉がキースイッチを叩くのをぼんやりと見ていた。
 脳裏には、中継ステーションからほんのわずかのあいだしか一緒でなかった、6人の名前が浮かんでは消えていた。
 ラビィ、パティ、ラミィ、ポニー。
 そして、いきなり文字通り飛び込んできたルフィー。
 キャティはいつの間にか加わっていたのだった。
 うるさい髪をかきあげる。
 ラビィがいてくれるから、大丈夫よね。私を襲ったモンスターのこともうまく処理してくれる。あれは…。
 根拠といっても、わずかな経験とそして噂でしかない。
 ほとんど、わたしの直感に過ぎないけれど。
 最後の瞬間に、ラビィに伝えようとして出来なかったことが気にかかった。
 もう一度、会うことが出来るかしら…。
 部屋のもう一方では親衛隊の士官が、インターカムに向かって、2、3回頷いている。その様子からするとエルザの願いは聞き届けられたらしい。
「…わかりました。では、このままここで待ちます。以上です」
 エルザを見ると、彼女にも軽く首を縦にふってみせた。
「すぐにこちらに来るそうです」
 エルザは視線を上げて、それに応えた。唇はかたく結ばれたままだった。
 今は、私に出来るだけのことをやるだけ。
 エルザは祈るように指を組み、待った。

 斜面をすベリ落ちている。
 そんな感覚だった。
 規則正しいブーツの足音。ガタガタと車輪がフロアの上をすべっている音。まぶたの向うを強烈な光が飛ぶように流れていく。一度、大きく揺れて、斜めに傾いていた身体が水平に戻った。背中が痛んだ。
 壁にぶつけたあとだ。
 そう思った時、意識が戻っていた。
 頭の上を囁くような会話が通り過ぎていく。
 辛うじて会話だとわかる。
 人の声にしてはやけに甲高く、鳥のさえずりのようだ。
 ポニーはゆっくり目を開いた。
 低速代謝剤のせいなんだわ。でも、効果が切れかかっているみたい。
 だって、こんなに遅いはずないもの。
 その通りだった。
 周囲の光景、音、全てビデオを早送りしたようなスピードではあるが、本当ならもっとずっと高速のはずなのだ。目の前、ずっと高いところを複雑に直線で仕切られた天井が飛んでいく。時折ぶれながら視界をかすめる影。人の動き?とわからない程ではない。日常の環境ではあり得ないほどのスピードだ。神経系を含めた身体全体の代謝スピードが極端に低下することにより、感覚器の応答速度が落ちて通常の外部の情報が何倍もス ピードアップしたように感じられる。
 今、見えているのがその現象だ。
 しかし、ポニーが浸透注入した分量なら、この程度ではすまない。
 背景以外は、あまりの高速にまったく判別がつかなくなっているはずだった。
 それぐらいの分量でなければ、分離したターミナル・ブロック内の乏しいエアと非常用のレーションで救助を待つことなんて出来なかった…。
 震える手で浸透注射器にカートリッジをセットし、自分の腕に押しあてたことを思いだした。
 きっと中和剤が代謝速度を正常に戻しつつあるんだわ。
 でも、効き目がちょっと弱い。
 今になるまで気づかないんですものね、
 救助されたことに。
 頭の働きがまだ正常じゃないわ。
 ポニーが思った時、ガクンと身体がひき戻され、天井の流れがとまった。
 目の前に顔が現れた。
 誰かが私をのぞきこんでいる。やっぱり、助かったんだわ。
 自分を見下ろしている兵士の心配そうな表情を見て、ポニーは初めて実感した。
 OX-11、あなたのやってくれたことは正しかった。
 私は生き延びることが出来たわ。
 伝えなきゃ。
 そっと目を閉じ、ポニーは思った。
 OX-11が話してくれたことを、スターリーフのみんなのことを。
 うまく喋れるか、わからない。でもやらなくちゃいけない。
 頑張って、ポニー。
 自らを励まし、思い切って目を開いた。
 途端にポニーの頭の中から言おうとした言葉が消え失せた。
「あなたは…」
 これは一体どういうことなのだろうか。
 低速代謝剤の中和時の副作用? それともただの幻覚…?
 目の前の顔はかげろうの様に輪郭がぼやけ、はっきりしない。
 ポニーは自分の上にかがみ込んでいる人物に向かって、もう一度尋ねた。
「あなたは…?」

 その言葉はキャティの脳裏でこだまの様に何度も反響を繰り返し、リフレインされた。
 キャティは呆然と見下ろしていることしか出来なかった。
 医療カートに載せられていた兵士はブリッジかCICルームの電子戦要員らしいとの報告だった。たいした負傷もなく無事に回収出来たという報告に、“回収” という言葉には少々眉をひそめはしたが、ほっとする思いだった。
 そして、直接その兵士に会おうとカートの側に立った。
 着艦ベイに入って目にしたのは、回収艇のゆるく傾斜したランプをドロイドに引かれながら降りてくるカート。そして、その上に固定されたポニーの姿だった。
 カートはキャティの前までくると停止した。
 間違いなかった。
 キャティはその場に片膝をつき、顔をのぞき込んだ。
 それに合わせるかの様に、ゆっくり、ごくゆっくりと少女の目が開いた。
 つややかな鳶色の肌。
 黒くぬれたように輝いている大きな瞳。
 どうして、ポニーがここに…。
 キャティは思った。
「大尉、どうかされましたか?」
 後ろに立つ医療要員がキャティに声をかけた。
「い、いいえ、別に」
 その時だ、ポニーの口から言葉が発せられたのは。

 もう一回、ポニーはその言葉を繰り返した。
 キャティが答えられずにいるわきで、カートの測定器のアウトプットを読んでいた局員の顔がパッと明るくなる。
「大丈夫です。ここまで回復しているのなら、もうほとんど問題無しです。言葉が少々不明瞭なのは、低速代謝剤の効果がまだ残っているせいですが、中和剤を投与してありますからすぐ正常になるはずです」
 キャティは聞きながら考えていた。
 なんて答えたらいいのだろう、ポニーに。
「大尉?」
「検査は後回しにして、部屋の方に運んで下さい」
 部下の声に促されて振り向き、指示を出す。相手はすぐにうなずいた。
「そうですね、この様子だとコンタクトの可能性は、まずありません。それが一番でしょう」
 すぐにカートを出そうとするのをとめて、キャティは横たわっているポニーに向き直った。横たわった体の上にそろえられているポニーの手をとった。
「心配いらないわ。ここは私たちの船だから。今は、十分休んで話しはそのあとにしましょう」
 キャティは、出来るだけゆっくりと、そして優しく語りかける。
 この速度ならポニーにも伝わるはずだ。
 カートの上のポニーはまたゆっくりと目を閉じた。
 薬の影響で動作が緩慢になっているというよりは、キャティの言葉を理解して安心したから…。
 キャティにはそう感じられた。
 ポニーの手を離すと、二人の医療要員に合図した。
 カートは回収艇を出てきた時と同じように、ドロイドに引かれて着艦ベイの出口ヘすべっていく。
 キャティはため息をついた。
 着艦ベイに来る途中で立ちよったコンパートメントで受け取った、マーサスからの緊急通信。そして、今、目の前に現れたポニー。
 何が起こっているのだろう。
 続けざまに起こる突発的な事件に、キャティは戸惑いを感じずにはいられなかった。
 本部では恒星破壊砲の一号鑑、“ウルプフランツェ” の逃亡に大混乱が起こっている様子だし…。
 このミッション21自体だって。
 自分が指揮している作戦なのに、まったく別の誰かがこのミッションをコントロールしているような気がした。キャティたちが気づいていない重要なファクターがまだある、そんなふうに思えてならない。
 別の誰か? 未知の要素?
 キャテイは寒気をおぼえた。
 突然、視線を感じたキャティは肩越しに背後を見上げた。
 着艦ベイの通常の2フロア分はある高い天井のすぐ下、シーリング・クレーンのコントロールピットが目に入った。何人かのクルーが、そこからキャティたちを見下ろしていた。ほとんどがカルパートの乗員だったが、ひとりだけ彼女の部下、情報局の制服が混ざっている。あとは何もなかった。
 異常はない。
 キャティは首をかしげた。
 気のせいかしら、ただの視線じゃなかったと思うのだけれど…。
 再度、ピットを見たが、やはリ何もない。さっき見えた局員の姿が消えている。それだけだ。そっと肩をすくめブリッジに行こうと2、3歩進みかけてキャティの脚がとまった。
 “データ収集後は、第二計画に移送”
 頭の中のスクリーンに浮かびあがった文字は、最初に受け取った暗号通信の文章だった。
 なんてことなの!
 このままでは、ポニーは…。
 陸戦隊員たちがもとの持ち場に散り、デッキのサービスクルーが回収艇を待機スポットヘ移動させようと作業を始めた中で、キャティは凍りついたようにその場に立ちつくしていた。
 その時、また手首の振動アラーム生き物のように震えだし、キャティにコールが入っていることを告げていた。

 いきなりとびつかれたラビィは、その勢いに後ろにひっくり返りそうになった。
 アンダーウェア姿の少女を体で受け止めてよろめく。
 通路の璧にドンと背中がぶつかって、どうにか持ちこたえた。
「良かったあ、わたしひとりになってしまったかと思ってたんだから!!」
 ラビィに抱きついたままグイと顔をあげると、少女は両手を解き放し右のこぶしで頬をぬぐった。
「…パティ、本当にパティなの」
 つぷやくような言葉がラビィの口から洩れる。
「何言ってるのラビィ、しっかりしてよ」
 その何倍も大きな声がラビィの耳をうった。ラビィは両手をためらうようなしぐさでパティの肩におくと、そのうるんだ瞳を見つめた。
「なんともないのね。本当に大丈夫、全然?l
「う、うん。ちょっとばかりひねったところがあるけど、平気よ」
 じっと自分に注がれる真剣なまなざしにパティは驚いたように一歩さがった。
 ラビィ、どうかしちゃったんじゃ…。
 そう思った途端、今度はパティが抱きすくめらた。
 ラビィはハードスーツのままでパティを抱き締める。
 やっぱり間違っていなかったんだ。
 パティの肌のぬくもりが押し付けた頬から直接に伝わってくる。
 ラビィはフローエに誘導され、この艦に降りる時に胸にわきあがった想いを再び思いかえしていた。
 絶望しちゃ、だめ。
 まだ何か出来るはず。
 生きていれば可能性はあるのだから。
 運命はきまぐれだ。でも、常に意地悪で苛酷なわけじゃない。
 現に、今ここにこうしてパティと会うことが出来たじゃないの。
「ラビィ、痛いってば、」
「ごめんなさい」
 パティの声に我にかえったラビィは、腕を離すと彼女に向かって微笑んだ。
 涙なんかみせられない。
 泣いてなんかいられない。
 誓ったじゃない、ルフィーの撃破章に…。
 ラビィは心の中で自分に言い聞かせた。
「さ、行きましょう!手伝って」
「!?」
 キョトンとして要領を得ない表情のパティ。
 ボッとしたり、急に変なこと言い出して、ラビィ本当にだいじょぶかしら。
 一瞬、本気でそう思った。
 が、やっと二人の傍らに人が倒れているのに気づいた。倒れている人物とラビィの顔を見比べるように、パティの視線が往復した。
「どうしたの?」
 訊きながらもラビィと一緒に両側からフローエのわきのしたに肩を差し入れ、彼女の体を支え起こした。
「重傷らしいんだけど、メディカル・ルームは大破していて使えなくて…」
「大変!」
「ちょうど接近中の友軍艦艇があって、そこに運びたいのよ。こっちよ!」
 着艦ベイに続く通路に向かって、ラビィは大きく首をふってみせる。
「わかったわ、それでこの人は?」
 パテイはラビィと一緒にかけだしながら尋ねる。
 こんな格好だけど、ま、いいか!
 アンダーウェアだけの自分の姿にちらりと視線を走らせたが、パティは肩をすくめるだけで済ませた。
「わたしと、あなたの命の恩人よ!」
「それって、」
「漂流しているブレイカ一からあなたを救いあげ、同じようにたったひとりで漂っていた私をこの艦に誘導してくれたの」
「ほんとうに?!」
 ラビィはエレベーター・シャフトの操作パネルに指を走らせながら頷いた。
 パティは自分が事態を把握していないのがいらだたしかった。
 もう、どうしてこんな馬鹿みたいなことしか言えないのかしら。
「わたし、気がついたらベッドに寝ていて…。知らなかった、そんなことがあったなんて。それで、カオスは、ラミィたちはどうなったの?」
 シャフトのドアが開いた。ニ人はフローエをあいだに支えながら運びこむ。
「あれからのことは、まだ何も。でも、もうひとつ大変なことが起きようとしているの。それをくい止めないと、ラミィとあの子が…」
 エレベーターは3人を乗せて艦の最下層へ急速に降下していった。

 ルフィーは人目を引くのも構わず、コントロール・ボックス内の他のクルーを押しのけるようにして外に出た。素早く左右に視線を走らせると、左へ急ぐ。
 すぐそこに下層への連絡シャフトがある。
 “スターリーフ”だって?
 ボックスの中で聞いた副長の言葉がルフィーを急きたてていた。
 ルフィーは開きかけのシャフト・ドアのすき間を無理やり抜け、ガランとした着艦ベイへ駆けこんだ。
 キャティの姿をさがした。
 いない。
 手近のデッキクルーをつかまえる。
「キャティ大尉はどうした?」
「今しがた出て行きましたよ。回収した 「標本」 のところへ行ったんじゃないんですか。そんなことをコンタクト・パネルで喋ってたから」
 デッキクルーの吐き捨てるような口調にルフィーはムッとなったが、ここはぐっとこらえる。
「何だ、その “標本” っていうのは?」
「さっきあの回収艇から下ろされて来たので3人目の、あんたたちがそう言ってるんだろう、忘れたの」
「何っ、」
 俺たちが標本?!
 ルフィーは反射的に相手の衿首をつかんだ。作業用のつなぎ姿のデッキクルーは思わず腰が引ける。
 しかし、クルーを殴りかけたルフィーの拳は相手の鼻の頭すれすれで静止した。
「わかった、もういい!」
 そう言うと相手を乱暴に突き放す。
 きびすをかえし、足早にデッキを離れた。
 後ろでは殴られるかと一瞬肝を冷やした整備員がホッと胸をなで下ろしていた。
 こんなのに構っている時じゃねえ。
 すぐにあとを追い掛けなければならない。今のを聞いてはなおさらだ。
 “標本”、“3人目”だって…。
 俺と、今のヤツと、もう一人いるっていうのか。それが 「標本」?
 それからあの副長が言った “スターリーフ”。
 そしてキャティ大尉。
 偶然にしちゃ、おかし過ぎる。何か嫌な感じだぜ。
 まさか、さっきのがラビィだとか…。
 馬鹿な。
 ルフィーは不安を打ち消そうとするかの様に首をふると、降りて来た時の隣の連絡シャフトに駆け込んだ。そのまま上がればルフィーが抜け出してきた、あの部屋のあるブロックにつく。
 ピットのガラス窓から見つけたあのキャティも、そこへ向かっているはずだった。
 確かめてやる。どうしても。
 キャティの正体、“標本” の意味、そしてスターリーフの消息を…。
 ルフィーは無意識のうちに腰のホルスターのスタンナーを抜き出していた。
 なんてのろいんだ、このシャフトは!!
 シャフトの停止する最上階、居住ブロックにつくのをルフィーはジリジリしながら待った。



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