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§ 突入 ルフィーは最後に首を出して周囲を見渡した。 “これが船だとはね” 偵察ポッドで接近していく時の量感は、圧倒的だった。 みるみるうちに豆粒ほどの点がふくれ上がり、ポッドの視察モニターを覆いつくしてしまった。船外作業用のエアロックに接舷した今は、どちらをむいても延々と装甲された外壁が平原のように拡がっていて、これが球面を形成しているとはとても信じられない。地平線、地平線という言葉が適切かどうかはわからないが、それが彎曲しているので辛うじて球だということがわかる。そういう感じだ。 船というよりはひとつの天体だった。 “ルフィー、何してるの、早くロックして” “わかった” エルザにせかされて、中へ。 作業用のエアロックだけに、船外機動ユニットを背中にしょった4人が入っても余裕は十分だ。外部シャッターのすぐ内側にある操作パネルを叩くと、気密ドアが閉じ、加圧が開始される。次第にエアロックが赤い光に満たされていき、それが白色光に切り換わった。加圧終了だ。 内部ドアが開き、4人はエアロックを出た。中に入ってしまえばそこは当たり前の通路があり、この構造物の通路の幅以外に、巨大さを感じさせるものは何もない。 一応、内圧を確認した後、機動ユニットを一度背中からはずす。 キャティとエルザはセンサ一等計測器のパックを床に下ろし、重力補償子の位置探査にかかった。ラビィとルフィーは爆薬と火器をはこびこむ。表層部には、人工重力がないので引っ張るだけで簡単に移動できる。キャティが壁にあるローカル端末パネルを分解している傍らで、ラビィがグレネード・ランチャーつきのマシンガンを取り上げた。 “こんなもの必要なのかしら” “用心に越したことはないさ。いくら無人艦だって、中がまったく無防備ってことにはならないからな” ルフィーも同じようにマシンガンを手にとり、マガジンをチェックする、 エルザは、手のひらに隠せるくらいの小さな球を、内部ドアのすぐわき、オフホワイトに塗られた壁面に取り付けていた。 “これでよし、と。キャテイ、あなたの方はどう?” “うまくいきそうです。直接、メインコントロールにアクセス出来る回線のようです” キャティは床にかがむと、パネルから取ったフラットケーブルを持ち込んだ装置に繋ぐ。フェイスプレートをはねあげ、両手からグラヴを抜き取ると、キャティはキーボードを叩きはじめた。 壁に片手を突いて、体を保持しながら、わきからエルザがモニターを覗きこむ。 4人のいるのは、エアロック前に設けられたホール状の一角で、幅広の通路が正面と左右に伸びている。どの通路に対しても、ラビィたちがいるホール側の床面に、それぞれ異なった色で大きな矢印と数字が描かれていた。 ラビィとルフィーは、やや離れて通路の璧にもたれ、結果が出るのを待った。 フェイスプレートの奥で、ルフィーは瞳を閉じ、何かをじっと祈っている。 ラビィにはそう思えた。 今、ならば…。 “ルフィー…” “ん?” 声に気づいて、ルフイーがラビィを見た。 そのとき、操作パネルのわきで言葉を交わしていたエルザとキャティが立ち上がった。 ルフィーの視線はラビィを通り越して、二人に向けられた。 ラビィは小さくため息をついた。 弱気だな、わたしって。 言ってしまうと、もう、ルフィーに会えなくなるような気がして…。 “位置はほぼ確認できました” キャティがラビィたちに頷いてみせる。 “やったな、さっそく出発か” ルフイーは軽く反動をつけ、ふわりと床におりた。 “予想していたよりも近かったけれど、かなりの距離だわ。船外服の機動ユニットが使えて良かったというところね。コースはキャティのパックに記憶させたから、彼女の指示の通りに行ってちょうだい” そう言いながら、エルザは床を指差した。 “この矢印の色と、ナンバーで順路がわかるようになっているわ。 先頭はルフィー、お願いね” “了解!” 当然というようにルフィーが破顔した。 “次にキャティ。彼女はコースを指示し、手持ちのセンサーで重力補償子の方向を確認する。そのあとにラビィと、わたし。二人は爆薬のコンテナを運ぶ。最後尾は、念のためトレーサーを撒いていくから、わたしが受け待つわ。以上だけれど、質問はある?” “いまの、これの状態はわからなかったの?” ラビィは足元を指差した。 その質問にはキャティが答える。 “発射待機の状態のようです。詳しくは分からなかったのですが、各部の自己点検が行われているみたいでした。カルパートの目標隠蔽が、うまくいっている感じです。 それ以上のことは、ちょっと…” “心配してるより、先にぶちこわしちまえばいいんだよ、行こうぜ” “ルフィーの言うとおりだわ、行きましょう” エルザの言葉に他の3人は無言で頷くと、装備の最終チェックに入った。 ルフィーは片手に固体弾マシンガン、ハードスーツのホルスターや固定フックにはブラスター、さらにあるだけのマガジンが固定されている。キャティはハンドブラスターをホルスターに、手には集合センサーユニットにアナライザー。ラビィは固体弾マシンガン、爆薬コンテナ。エルザも同様に爆薬コンテナをさげ、大口径のハンドブラスターを手にしていた。 キャティとルフィーは、進行方向のサインの出し方を確認し合っている。 すべてが終るまでは、まだ、言えない…。 ラビィは思った。 二人を横目に見ながら、離れるようにフロアを蹴った。ラビイが漂っていく、その目の前に、フェイス・プレートを閉じ、装備のチェックを終えたばかりのエルザが立っていた。 “どうかしたの、ラビィ” エルザは彼女の表情に気づき、呼び止める。 “なんでもないわ…” ラビィは首を左右に振った。 だが、エルザがラビィの腕を掴んだ。 コンテナに脚先をかけて自分の身体を固定し、ラビィを引き戻す。 二人は床をけってキャティとルフィーから少し離れてホールの隅で向き合っていた。 エルザは通信を、手のとどく範囲でしか使えないパーソナル・モードに切り換えた。ラビィもそれにならう。 ‘それで?’ ラビィは何も言わず、じっとエルザを見つめていた。 ‘…ううん、なんでもないの’ “おい、早くしろよ” 準備を終えた、ルフィーが呼びたてる。 その声に、ラビィの肩がかすかに震えたようにエルザは思った。 “すぐ行くわ” 手首のマイクロスイッチで、モードを素早く切り換え、また戻す。 ‘ラビィ、いったいどうしたの? これからの作戦に自信がない、とでも…?’ 肝心なときに弱気になってるわね。 エルザに見つめられて、ラビィは首を左右に振った。 ‘せっかく、また会えたのに、こんなことに巻きこんでしまって…。生きててくれて、よかった、ありがとうって、言いたいんだけれど…。けれど、今だと、別れの言葉になりそうで…’ ラビィはうつむき加減に視線をそらす。 その言葉を聞いたエルザの顔に微笑みが浮かんだ。 妙なとこで、シャイなんだから、 ラビィ…。 安心すると同時に、ラビィの言葉が胸のうちを暖かいもので満たしていくのが分かる。 ‘こら!’ ‘えっ、’ 驚いて顔をあげたラビィ。 エルザは自分のヘルメットを、こつんとラビィのヘルメットにぶつけた。 ◆ ヘルメットを介して、エルザの声が直接ラビィの耳に響く。 「それは、誰よりも、わたしが一番に言いたいセリフよ。 ありがとう、ラビィ、生きていてくれて…。また、会えて、嬉しかったわ、本当に。…。それに、こうしてみんながここに来たのは、あなたのせいじゃない。みんな、自分で選んだのよ。…。だから、弱気はだめ。もう、絶望してなんかいられないんだから」 瞳を閉じ、そして開く。 じっと見つめるエルザにラビィは黙って頷いた。 「やりとげて、みんなに、言ってあげなきゃいけないわ。ありがとう、って。特に、あのエースパイロットには、ね」 「ええ」 ラビィの顔に笑みが戻る。エルザもニッコリ笑う。 「そうじゃなくちゃ! ルフィー、キャティ、出発よ」 エアロック正面の通路で待つ二人に声をかけると、エルザとラビィは爆薬コンテナをひろい、床を蹴った。 頭上すぐのところに、恒星破壊砲を投影した巨大なフラットモニターがある。 「どうして、うちの艦長は彼女たちに手をかさないんだろ?」 「そりゃ、立場ってものがあるからでしょう」 「でも、ほっとけばカオスも何もかも、第9星系ごと吹っ飛んじゃうのよ。私なら、この際多少のことには目をつぶって、協力するけどな」 反論されたオペレーターはコンソールの上に走らせていた手をとめた。 「…そうよね、そうなんだけど」 彼女は後方に目をやった。 中央コンソールの周りに、ブリッジを 「不法に占拠」 した 「侵入者」 と、艦長、副長がいる。艦長はもうシートに拘束されていない。「細工」 というのは単なるハッタリだった。その上 「侵入者」 たちは行っているすべてをブリッジの全員に明かしている。恒星破壊兵器への侵入の手段と、現在の状況を…。実物が目の前に映っている。 「ほんとは、隙をみて主導権をとりもどすっていうのが当然なんだけど…」 “ブロック0901通過” オペレーターの声にブリッジのスピーカーの声がかぶさった。 いつもなら、行動的な艦長の指揮下、生気に満ちているカルパートの空気が、なぜか冴えなかった。 再検討の結果、“ウルプフランツェ” は奇妙な現象を発見していた。 全天の中で特定の範囲内の恒星が消えている。 しかも、第9星系母星の想定位置を中心とするごく狭い立体角、その内側の恒星が消えている。定位天測用の恒星灯台以外の小恒星までチェックの範囲をひろげ、ようやく判明した結果だった。 各サブシステムの自己診断は、観測・照準システムに異常なし。 つまり、何かが目標恒星とその周辺を隠しているのだ。 “ウルプフランツェ” は発射を妨害する何者かの存在に、原因の可能性を絞った。 妨害の方法は? 対抗手段は? 目標破壊の可能性は? 中央の主マトリクスの連鎖が推論に入ったそのとき、末梢神経系ともいえるローカルコントロールが艦内に異物を発見した。 “本来は、光速圏への突入、離脱時に限定された時間にピンポイント的に使用する想定で設計されているんです。これ以上スペック外の使用を続けるのは…!” 電子戦艦橋の先任曹長の抗議の声だ。 「あと2時間、いや、標準時間で1時間でもいい。もたせてくれないか」 アディンは隣でこれを聞いているパティを意識しなから頼みこむ。 “先程も申しあげましたが、遮蔽スクリーンも能力の限界です。すでに、微調整が困難になって、「ゆらぎ」 が生じています。いま、重力補償子の発振を緊急に停止したら、もろにその影響を遮蔽システムがかぶります。わずかずつ発振をおさえていけば、多少はなんとか出来ますが…” 「やってくれるか」 アディンの質問に対して、コンマ何秒かの沈黙があった。 “しかたありません。ただの命令じゃない、他ならぬ副長のねがいですから” ちいさなモニターのなかで曹長はニヤッと笑った。 “時間の保証は出来ませんが、可能な限リ、恒星の遮蔽を引き延ばしてみます。ただし、重力補償子の発振は早々にとめなければならなくなります。これだけは了解しておいて下さい” 「わかった、頼む」 “では、以上です” 通信を終えると、額に汗が浮かんでいるのに気づいた。 アディンはヘルメットをぬぎ、汗を拭う。ショートカットにした黒髪が現われ、隣に立っていたパティは、初めてアディンの顔を知った。 「すいません」 見つめているパティににこりと笑い、アディンは再びヘルメットを被り直す。 「なんでもないですよ、これくらい。あっちへ乗り込んでいる、あなたの仲間に比べればね」 カノンはあれから黙って艦長席に座っている。 『必要ないから』 と、キャティたちが発進した直後、パティが彼女の拘束を解いてから、パティ、ポニーたちがブリッジですることを見ていた。ときおり、流される偵察ポッドとの交信を他のブリッジ・クルーと同じように聞いていた。 それでも、カノンは何も言わなかった。 オレは、命令に従って、アコンカグヤ艦隊に情報を流さなかった。 やつらは、命令もないのに、破滅を阻止するために乗りこんでいった。 艦隊は壊威し、…か。 カノンはまだ考えていた。 “次の分岐は左、「0551」 と描いてある方へ曲がってください” “OK!” キャティ、ルフィーの声が両耳のすぐそばにあるスピーカーから響く。 前方に視線をすえたまま4人は通路を突き進んでいた。通路が上下左右を猛スピードで飛び去っていく。先頭のルフィーが分岐に遂する。その瞬間、背中の機動ユニットが右に向かってゴッと短く鋭い噴射を吐く。ルフィーの体はきれいに直角にターン、左の通路に飛び込んだ。コンマ何秒かの間隔てキャティ、ラビィ、エルザが続く。 幾つか分岐を通り過ぎる毎に、エルザはトレーサーをひとつずつ落としていく。 落とすたびに、すぐ後方に転がっていくそれは、脱出の時の道標だ。また、同時にそれは中継器の働きも果たして、現在のキャティたちの情報を、偵察ポットのバースト通信でカルパートのブリッジに送信する役割も持っている。 “今度は、右へ。イエローの「0307」です” “OK!” もう憶えていられない程の数の分岐を、通リすぎてきた。だが、目的の重力補償子の制御系の中心に接近しているのかどうかはまったくわからない。通路の幅も、やや狭くなったような気がするが変化しているようにはみえない。 どこまでも、どこまでも無限に続いている。 ラビィは思った。 “次は、直進。「0182」” “りょうかい!” “「0099」 が目標の制御ブロックです、もうすぐです!” “わ−った!!” ときおり、キャティとルフィーのやりとりがスピーカーから流れる。その時以外、聞こえるのはハードスーツが通路の空気を切り裂く唸りと、自分自身の呼吸の響きだけだ。 移動の経過はまとめてカルパートに送られているはず。 パティとポニーはどんな気持ちで聞いているのだろう。 カルパートの乗員はどうなのだろう。 きれぎれに、そんな想いがラビィの脳裏をよぎる。 「見てください、キャティたち、もうすぐです」 ポニーの声にパティ、フローエ、アディン、そしてカノンも彼女のまわりに集まる。 他のブリッジ・クルーも一斉に中央コンソールを振り返った。 「ほんと?」 コンソール上のモニターにむかって、パティは身をのりだした。 そこにはただ数字がならんでいるだけだ。怪冴な表情のパティに、ポニーは質問される前に説明した。 「現在までに通過した前部球体内のブロック・ナンバーです。交信会話にあったものと同じです。制御の中心が0099、現在地点が0112ですから、あとちょっとです」 「妨害とか、阻止装置は?」 「交信記録の転送を見た限りでは、大丈夫です」 アディンに答えるポニーの表情は明るい。 その時、船殼を揺るがす衝撃と同時にブリッジを暗闇がおおった。 ブリッジの全員が手近なものにしがみついた。すぐに照明は回復する。しかし、ポニーの目の前でも、各ブリッジクルーのコンソール上ひも、パネルに赤い非常表示がずらりと並んだ。 「どうした?!」 アディンより一瞬早く、カノンがインターカムに取り付いた。 反射的な動作だった。 “こちら機関部、レプリション炉がスクラムです、現在補助動力が稼動中!” “電子戦です、すいません重力補償子が制御をふりきって” 電子戦艦橋から、先任曹長の声がわりこんだ。 「で、状況はどうなってる?」 “艦長ですか? 遮蔽スクリーンはもう回復しました。ただ全力稼動は無理です。かなり範囲を狭めなきやなりません。重力補償子の方は当分復帰不可能です” それを聞いてポニーの顔から血の気がひいた。 まさか、やっとキャティやラビィが制御系に取りつこうという時になって…! ポニーの表情と同じく、ブリッジの動きは凍結されたように止ってしまった。 コンマ何秒か、カノンはハンドセットを握ったまま考えた。 限界だな…、彼女たち。 そして、オレも。 面子やプライドは、どうでもいい。 仲間たちの敵が、オレの敵なんだ…、 だから、これだって、オレの戦いだ。 次の瞬間には、きっぱりした声がマイクに向かって響いた。 「よし、範囲を絞って遮蔽続行だ。恒星破壊砲のエネルギー活動のデータも逐次送ってくれ。追って指示を出す」 “了解しました” 「艦長、」 「ああ、わかってる」 カノンは副長の肩をぽんと叩くと、パティたちを見た。 「今回だけぞ…。もう、危なっかしくて、黙ってみてられん」 ハンドセットをコンソールに戻し、右手をパティに差し出す。 「本当に…・?」 半信半疑の顔つきでパティは艦長を見上げた。 「ああ、もちろん。嘘なんかつくものか」 カノンは左手でヘルメットを頭から抜き取り、そのまま脇にかかえこんだ。 ヘルメットのトから、パティが思っていたよりずっと若い顔が現れた。 ブラウンの瞳が真っ直ぐにパティを見つめる。 そして、にやりと笑った。 「さっきは、我々親衛隊のことを散々けなしてくれたな。見せてやるよ、パティ。親衛隊の、本当の戦い方を…」 「はい…!」 パティは力を込めてカノンの手を握った。 カノンがブリッジ中央、艦長席に立つ。 「これより、カルパート全艦は第1級戦闘体勢に入る。陸戦隊、出撃準備!!」 「タクティカル・フォーメーションC-11! 全艦、第1級戦闘体勢。陸戦隊は出撃準備!」 カノンの凛とした命令を、アディンが大きな声で復唱する。 その一言は、まるでブリッジ・クルーひとりひとりに、かけられていた呪いを解くキーワードのような効果があった。 さざ波のように応答と報告の声が起こる。 オペレーターの指先がキーボードの上を舞う。 「…了解!」 「システム復旧状況は順調」 「現在の機関出力、通常の74パーセント!」 一個の有機体としてのブリッジの働きが生き返る。 沈みかけていたブリッジの空気は、一気に活気づく。 それは、パティとポニー、そしてフローエさえも目を見張る程だった。 0099。 床には赤い数字が大きく記されていた。 ルフィーを先頭に進んできた4人はそこで初めて、足止めをくらっていた。 分岐もない1本道の通路の端を、装甲されたシャッターがいっぱいに塞いでいた。 “だめです、開きません” キャテイは首を左右に振った。 手もとのアナライザーから伸びたコードが、壁面の端末パネルに繋がっている。 “くそっ、ここまで来て立ち往生かよ!” “こうなったら、爆破するしかないわね” 腕を組んで考えこんでいたエルザが顔をあげる。 “でも、爆薬はこれだけしかないわよ。重力補償子の破壊にどれだけ必要かわからないのに、今使ってしまったら” “こんなことなら、本当に1個中隊連れてくればよかったぜ”` ラビィとルフィーは床に置いた二つのスーツケース程のコンテナを見やった。 “制御室に行けないことには話にならないわ。まず、ケース1個分でやってみましよう。恒星破壊砲の状況は、どうキャティ?” キャティは、また首を振ってみせた。 “悪化しています。照準系の活動が活発化してきています。こちらの目くらましに、…どうやら気づいた様子です。いつ、発射準備が完了するかまではわかりませんが” “踏んだり、蹴ったりか…。ラビィ、セッテイング手伝ってくれ” ルフィーは機動ユニットを背中から外しはじめた。 “わかったわ” ラビイは頷き、ルフィーの傍らに膝をついた。 “じゃあ、キャティはロックの解除の方をたのむわ。その間に、私は制御系のマトリクスに侵入を試してみる” “はい” 欺瞞の正体はほば判明していた。 あらゆる電磁波を何らかの方法で遮っているのだ。 だから第9星系の母星が観測にかからない。したがって目標の概略座標は想定位置とさして変わりないはずだ。だが、砲を発射するには観測によって修正した、より精密な座標が必要だ。 そこへ、2次、3次の解析情報が “ウルプフランツェ” のメインコアに入った。 一瞬だが、第9星系の母星が観測にかかったのだ。同時に至近距離に重力震が発生した。その後、いままで見えなかった幾つかの恒星が出現していた。 “ウルプフランツェ” が決定を下すには十分な情報だった。 本体機能には、異常なし。 最終的には精密照準の補正データが必要だが、発射シークエンスに突入する。 “ウルプフランツェ” は動力系のホールドを解除した。 爆発的なエネルギ放出に向けての蓄積が開始された。 一方、ローカルコントロールは、前部の重力補償子の制御中枢に接近する異物を、機能障害の原因となると判断し、排除することを決定した。 |
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